2013年9月3日火曜日

乱読のすすめ88-壊れゆく“兵士”の命と心











   東北新幹線の車内で、ジャーナリスト三宅勝久さんの新著『自衛隊員が泣いている』(花伝社)を読みました。
    自衛隊員の自殺率は省庁のなかで突出して高く、いじめ、暴力、冤罪、癒着、隠ぺいなどの不正行為が自衛隊のなかで繰り返されている…三宅さんは丁寧な現場取材にもとづき淡々と事実を語ります。

  
   2006年11月、陸上自衛隊真駒内駐屯地の体育館で「徒手格闘」の「訓練中」に意識不明となり、一日後に死亡した島袋英吉さん(当時20歳)。傷だらけの息子の遺体を見た父親島袋勉さんは、「真相を知りたい」と国家賠償請求訴訟を起こしました…。

   「改憲」「集団的自衛権」「国防軍」「文民統制(シビリアンコントロール)の形骸化」などが争点になっています。具体的には自衛隊の存在、あり方に関わる問題ですが、自衛隊がいまどんな状況にあるのか、ありのままの姿はあまり知られていません。自衛隊を語るうえ読んでおくべき文献だと思いました。

   三宅さんの視線が柔らかく温かいのもいい。多くの自衛隊員が実直で心優しいからこそ、彼らに人を撃たせたくない、そんな思いが伝わってくるルポルタージュです。