2013年10月18日金曜日

非武装の「風となれ」


 





民主党の中では数少ない真面目な護憲派の若手議員Aさん。先日、用事があって彼の部屋を訪れたら、元気がない。
先輩の改憲派議員から「アメリカから押しつけられた憲法じゃないか」といわれ、うまく反論できなかったとのこと。目にくまも。お疲れ。
元気をだしてもらおうと、「押しつけでなにがわるい」論を伝授。

「ただし、アメリカが日本に押しつけたというのは間違い。アメリカをはじめファシズムとたたかった世界と、日本の民主勢力が、当時、残存していた大日本帝国政府にたいし、民主憲法を『押しつけた』。大日本帝国政府は天皇制の温存を求め、国民主権と軍備放棄に反対していたから」と。
「なるほど」と明るい顔に。民主党内では希少な存在なのだから頑張ってほしい。

それにしても改憲派は「押しつけ憲法」論しか言うことがないのか。

山室信一さんは『憲法9条の思想水脈』(朝日新聞出版)のなかで、憲法9条は突然変異的に現れたわけではなく、それまでの世界の平和思想を受け継いでおり、その中には日本の非戦、反戦の思想と運動もふくまれると述べておられます。

たとえば、中江兆民の『三酔人経綸問答』のなかの文章。
「日本が軍備を撤廃したことに乗じて、荒々しく侵攻してきたとして、私たちが一切の刃物を手にせず、礼儀をもって迎えるとしたら、彼らははたしていったいどうするでしょうか。剣をふるって風を斬ろうとしても、とりとめのない風をどうすることもできない。私たちは風になりましょうよ」

山室さんは、この文章のスタンスは、憲法前文「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」に引き継がれていると指摘します。

憲法9条は、押しつけどころか、それまでの日本の平和思想を束ね、体現したものでもあったのです。